あなたが呪われる前に伝えたかったこと

2026.03.01
家族

おかあ、あんた呪われるぞ!?

もう、いい加減にやめてくれ…

積もり積もった長年の私の我慢…

もう限界…っ

私は、ついに母に言ってやった——  

私がずっと我慢していたこと。

それは、母のおばあちゃんの悪口だった。

「あのおばあさん、ずっと働かないで贅沢してるんだよ!」

…まーた始まった、おかあの『おばあちゃん悪口大会』

母は、おばあちゃんをすっごく嫌っていた。

家族がちょっとでもおばあちゃんの話をしたら、

「どうせあのおばあさん、あんたに甘いジュースばっかり飲ませてたでしょ!」

「息子たちを寮に入れて、自分は楽してたんだよ!」

「病院行くのに、いつもタクシー使って贅沢してたんだよ!」

…とまらねぇ〜〜

一度悪口が始まったら何十分も聞かされる。

(おかあの前でおばあちゃんの話は厳禁だ…)

そう思っておばあちゃんの話はしないようにする。

…んだけど、聞いてもいないのに母はおばあちゃんの話をしてくるのだ。

「お母さんが名前と漢字を決めてたのにね、おばあさんが違う漢字を決めてきてね…!」

「そしたら病院で、おばあさんに怒鳴られてね!」

「お母さんね、あの時に病んだのよ…!」

まぁぁたその話かよ〜〜。

この話は、母が姉を産んだ時の話。

もう何百回も聞いたって!!

…そう言いたいけど、言ったらまためんどくさそう…。

「そっかそっか…」

と、いつも穏便に済ませる。

おばあちゃん家に行く時も当然、母は抜き。

父と姉と私が出発するのを、清々しい顔で「いってらっしゃい」と見送るのが、いつもの母。

そうとう嫌いなんだな…

子どもの頃から大人になってもおばあちゃんの悪口を聞き続けた私は、そう思うようになっていた。

まぁでも、2人が会わなければいいし…
悪口も聞き流していればいいよね…

そう思っていたのだが。

ある事件が起きた。

年始休暇中に夫の実家から自宅に戻ると、母から電話が…

「おばあさん年末に亡くなって、もう葬儀も終わったからね」

母が日常会話のように、サラリと言った。

「…え?」

「うそでしょ?」

身内が亡くなったのに…

そんな重たいこと、サラリと言うなよ。

しかも、何でその時に言わない?

私は声が出なかった…

「ほら、旦那さんの実家に帰るの楽しみにしてたでしょ?悪いと思って言わなかったの…」

…早く言えよ、そんな大事なこと。

ふつう、親族が亡くなったらみんなで見送るもんだろう…

私、おばあちゃん見送りたかったわ…

「おかあはやっぱり、ふつうじゃない!」

そう思い、私はしばらく実家にも足が遠のいていた…

時が経ち、

いろいろ思うことはあったけど…

おばあちゃんは亡くなっちゃったし…

もう、おかあからおばあちゃんの悪口を聞くことはないだろうな…

そう思っていたある日…

私は久々に実家に帰省して、母とたわいもない話をしていた。

母にもやっと平穏な時が来たんだと。

母は、やっとふつうの人に戻ったんだと、信じて疑わなかった…

ところが…

耳を疑う言葉が母の口から出てきたのだ。

「おばあさんったらね、ずっと働かないで楽してたんだよ!」

は…?

まだ言うの…?

おばあちゃんの悪口…?

私は言葉が出なかった。

おい、おい、おかあよ…

おばあちゃん、もうこの世にいないんだよ…

自分の母親ながら、私は呆然とする…

ハッ!

その時私は、ある記憶を思い出した…

それは、私が大好きだった『源氏物語』の漫画の一場面だ…

その場面では、主人公の光源氏が、亡くなった昔の恋人の悪口を言ってしまう。

そしてその悪口が、怨霊となった昔の恋人の逆鱗に触れてしまうのだ。

彼女は、

『この世にいない者をかばうどころか、悪口を言うなんて…許さない…!』

そう言って、光源氏本人ではなく、光源氏の最愛の人に取り憑き…

最終的に呪い殺してしまうのだ!!

(こわっ!)

(亡くなった人の悪口言ったら、呪われるんだーー!)

小学生だった私は、その場面を見て、ブルブル震えていた。

それを今、思い出してしまったのだ…!

亡くなった人の悪口言ってる…

おかあ、あんた絶対呪われるわ…

私は恐ろしくなった…

源氏物語に出てきた怨霊が、頭の中で「ヒヒヒ…」と笑ってる…

おかあ、危ない…!

もうやめろおぉぉぉ!!

もう、悪口言うなあぁぁぁ!!

もう、いい加減にやめてくれ…

おばあちゃんは、もういないんだから!

積もり積もった長年の私の我慢…

もう限界…

そして私はついに、母に言ってやった!  

『亡くなった人の悪口、言わないでよ!!』

一瞬、空気が凍った。

その時、おばあちゃんの悪口を言っていた母が…

「…うん、わかった。」と

悪口をピタッとやめた。

母はアッサリ、悪口をやめた。

そして、それから母は、おばあちゃんの悪口を一切言うことはなかった……

母は、本当に病んでいたんだと思う…

ずっと一人で傷ついた心と闘っていた。

私は、母とおばあちゃんが合わないのが当たり前だと思って、母の気持ちを考えてあげなかった…

もう、イヤな記憶に縛られなくていいよ。

これからは、楽しいことをたくさん見つけて生きて行こうよ。

娘の中学での発達障害発覚を機に正社員からパート勤務にチェンジ。「自分らしい生き方」を模索中の40代、愛犬・乗馬・ヒトカラが癒やしです。日常に『クスッ』と笑える記事を書いていきたいです。

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