「…1つ、2つ、3つ…」
ドラッグストアで絆創膏を買いあさる私がいた。
私の手には
『ガーゼ仕様・剥がす時に痛くない』
と書かれた大判の絆創膏。
私が購入した数
なんと8袋、24枚!
「よし、これだけあれば…」
私の乳は守られるっ!!
いざっ!決戦の夜へ。
私が絆創膏の購入を決意したのは、数日前の事だ。
きっかけは、
『卒乳 方法 体験談』と検索しまくり、
たどり着いたあるブログだった。
…そう、私は息子の卒乳に踏みきれず、悩んでいたのだ。
「ママーっ!乳!」
そう言って抱きついてくる息子は、2歳10ヶ月。
最近では、1歳前後で卒乳をはじめる人が多い中、息子はもうすぐ3歳になる。
しかも、息子の乳への執着はかなりのものだった…。
我が家では、授乳のことを『乳』(ちち)と呼んでいるのだが…
家の中でも車の中でも「乳ーっ!!」
人前だろうが、おかまいなしっ
「ママーっ!!乳ーっ!」
と私の服をめくろうとしてくるのだ。
…執着…ヤバっ
と思いながらも、私自身そんなに卒乳を急ぐ気持ちはなかった。
「3歳になったら、息子と話し合って決めればいいかな…」
そう思ってたのだ。
…が、しかし。
状況は一変した。
きっかけは、第二子の妊娠だった。
「うぅ…ぬぅっ!…痛ーいっ!」
妊娠してからの授乳が、とにかく痛い!
授乳するたびに、拳を握って数秒耐えるほどの痛みが襲ってくる!
とにかく、乳首が痛いっ!
内側が…ぐわぁぁ!!って痛い…
それでも、乳をほしがる息子にさしだすのだが…
やっぱり、痛いっ!
痛いっ!!
もう無理ーっ!!
耐えられなくなった私は、
即卒乳を決意した。
しかし…
問題は、どうやって卒乳するかだ。
…あの執着が強い息子
絶対、大変なのは確定だ…
そして私は、検索魔と化した。
『卒乳 方法 体験談』
片っ端から読みあさる…。
そこで、何度も何度も目にする言葉があった。
『3日間、夜カオス』
…これは、…なんだ?
読みすすめると、
『3日間、蹴られ叩かれまくり!』
『延々と泣き叫ばれ、カオス…』
『ひたすら寝たふり!3日は…うつ伏せで耐える!』
………
……怖っ!!
…地獄だ…っ
…でも、やるしかない…っ
他の子が3日なら…
我が息子は、5日っ
…いや、カオスな1週間を覚悟しておいたほうがいい!
そうして、私が選んだ卒乳方法は…
『胸に絆創膏を貼って、怪我をしたことにする』
という作戦だった!
この方法が、長期戦での成功例が多かった。
…絶対、息子は長期戦になる!
この方法でいくしかない!
そうして、私は絆創膏を買いに向かったのだった。
そして迎えた、決行の日。
私は準備をして、息子に伝えた。
「ママね、乳を怪我しちゃったの…」
「えっ!?」と心配そうな顔をする息子。
すかさず絆創膏を貼った乳を見せた。
「治るまで乳できないの、ごめんね」
「…なおるまで?」
そう確認してくる息子に頷くと
息子は少し考えて、小さく頷いた。
…よしっ!あとは寝るだけだ!
私は夫と息子と、いつも通り布団に入った。
「…まだ痛い?」
と聞く息子を、なんとか寝かしつけた。
乳なしで寝かしつけに成功しただけで…
大きな一歩だ!
ドキドキ…
シーン…と静まりかえる寝室
…30分、また30分とすぎた
その時、
「ん…うぅ…んー…」
きたーーっ!!
息子が手探りで乳を探してるっ
寝ぼけながら、確実に乳を探してる!
「…パパ !起きてっ」
寝てる夫を叩き起こし、
臨戦態勢だ!
くるぞっくるぞ…
私と夫は、目を見合わせて構える!
「んー、うぅ…」
そして、私に伸びてきた息子の手が、ピクッとして…
…離れていく…
「…ぇ?」
そのまま息子は、私に抱きつくと…
…また寝た。
…はっ!?寝た?
…え、…なんで?
「…ぇ、マジ?」と夫も呆然。
それでも「…ここからかも!」と構えていた夫と私は…
完全に拍子抜けだった…。
何度かその後も、グズグズしかけた息子。
…でも、
乳を探す手がピクッとして、離れてく…
そのまま抱きついてきて、寝るの繰り返し。
いつの間にか、朝になっていた…。
「あれ…?昨日の夜、授乳してない…」
…いや、でも…まだ1日成功しただけだ…
たまたまかもしれない…
そう夫と私は、気をゆるめずにいたのだが…
2日目も、同じ…。
昼間に「…ママ、まだ治らないの?」と心配して、絆創膏を確認してきたが
…3日目も4日目の夜も、なにもおこらない。
…5日目には、絆創膏すら貼らずに終わった…。
卒乳…完了。
あまりにも、あっさり成功した卒乳だった。
使った絆創膏、たったの6枚…
「あんなにたくさん買ったのになぁ」
余った大量の絆創膏を見るたび、私は笑ってしまう。
あんなに悩んで…。
決死の思いで挑んだ、あの夜。
でも…
卒乳のあっけなさには
もしかすると、
「ママは怪我してる」
という息子の優しさが、あったのかもしれないな。
余った絆創膏は、息子の優しさの証だ!
「さて、これ何に使うかなー」
余った大量の絆創膏が、愛おしく見えてきた。