「7」にした運命

生活

 
(えっ!?こんなに…なんで!?)
 

 
渡された袋の中には、身に覚えのないものがあった。
 
そんなわけない!何かの間違いや!
 
そう思いたいが、残念ながら現実らしい。
 
 
なんでこんなことになったのか、私は全く分からなかった…
 
 
 
 
「そろそろ来るかな?」
 
今日は、生協の宅配が届く日。
 
毎週12時頃に届くようになっており、私は自宅で待っていた。
 
 
(ピーンポーン)
 
 
予定していた時間に、玄関チャイムが鳴り響いた。
 
玄関モニターも確認せず、玄関ドアをガチャリと開ける。
 
 
「こんにちはー!!」
 
 
そこにいたのは、お馴染みの配達員さんと、積み上げられている4つの保冷箱。
 
保冷箱の中には、商品が入ったビニール袋が入っている。
 
 
「常温でーす!」
 
『ハイ』
 
「冷蔵でーす!」
 
『ハイ』
 
 
私は1袋ずつ、配達員さんから受け取っていく。
 
ルーティン化している2人の流れ作業を、この日も変わらずやっていた。
 
 
 
でも…
 
 
いつもと違うことがあったのだ…
 
 
 
(ん!?1、2、3、4……なんでこんなにあるん!!!?)
 
 
 
半透明のビニール袋に入っているので、正確な数は分からない。
 
 
でも、これだけは分かった。
 
 
同じ商品が、とてつもなく大量にあることが…
 
 
 
「………」
 
 
 
私は言葉を失う。
 
 
 
「どうしました?」
 
 
配達員さんの声に、ハッと我に返る。
 
 
「あっ、なんでもないです!」
 
 
 
なんでもないことない!!
 
 
 
でも、何故か配達員さんに言うのは気が引けた。
 
配達員さんは深く気にも止めず、ルーティン作業を続けた。
 
 
 
(どういうこと?どういうこと?)
 
 
私の頭は、完全に大量商品のことで埋め尽くされている。
 
だが、手だけは作業を覚えているようで、商品を受け取り続けた。
 
 
 
「今週もありがとうございましたー!!」
 
 
威勢の良い挨拶とともに、颯爽と次の現場へ向かっていった配達員さん。
 
 
 
「………」
 
 
 
一気に玄関に静寂が訪れる。
 
 
取り残された私は、改めて大量にある商品を見つめる。
 
 
 
「!!!。ちゃんと数えよう!!」
 
 
ふと我に戻った私は、玄関でビニール袋を雑に破り開けた。
 
 
 
「1、2、3、4……なんで7つも入ってるん!?」
 
 
 
信じがたい現実を目の当たりにする。
 
 
 
そこにあったのは、大量の冷凍海老フライ。
 
 
注文したのは1袋のはず。
 
 
でもここにあるのは、間違いなく7袋。
 
 
 
「なんでなんでーーー!!!?ス、スマホー!!」
 
 
 
訳が分からず、狭い玄関を行ったり来たり。
 
 
そして、私は注文履歴を確認するため、ドタバタとスマホを手に取る。
 
 
「えっと、〇月△日、冷凍海老フライ…」
 
 
もたついている手でスマホを操作し、注文履歴を確認すると…
 
 
 
 【冷凍海老フライ注文個数7】
 
 
 
(ガーーーーン)
 
 
 
——7……私間違ってるやーーん!!
 
 
 
そう。私は「1」ではなく、「7」と指定してしまっていたのだ。
 
 
 
そして、注文履歴に表示されている、ある数字を見て更に驚愕する。
 
 
 
「538円×7袋=3766円!!!?」
 
 
 
海老フライだけで、こんなに高額になったことが、今までにあっただろうか…
 
 
 
——私…なんで間違えたんやー!!
 
 
自分のミスで起きた事態に、ショックを隠しきれない。
 
 
そしてこの大量の海老フライ…
 
 
しばらく、我が家の食卓に並ぶ運命となったのだ。
 
 
 
 
数日後。
 
 
「かっかー。海老フライもう入れないでー」
 
 
口元をへの字にしながら、お弁当箱を渡してきた娘。
 
パカっと開けると、寂しそうに取り残された海老フライが、ころんっと横たわっていた。
 
食卓に並べるだけでなく、娘のお弁当にまで、海老フライを入れる始末。
 
 
——そりゃもう飽きるよねー。
 
 
娘にも海老フライにも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
 
 
(ポトン)
 
 
残された海老フライを、生ゴミコーナーへと落とす。
 
 
でもそこには…
 
 
 
(海老の尻尾だらけ…)
 
 
そう。私が昼食で食べた海老フライの尻尾が、ウジャウジャと散らばっていた。
 
 
(私も…もうええわー)
 
 
娘だけでなく、私も胸がいっぱいだった。
 
 
 
——次からは、しつこいほど“1”になってるか確認しよう。
 
 
海老フライ生活は、もう勘弁。

2人の子をもつ元看護師。カフェで読書をするのが大好き。あたたかく、やすらぎのある暮らしを目指し中。感性を磨き、自分の経験を元に、心に寄り添える発信をしていきたいです。チャキチャキな大阪弁でのお笑い要素も満載♪ 実績:第4回IWriteグランプリ優勝

関連記事