秘密のもみじ

2026.04.03
出産・育児

—あー。なんであんなこと言うてしまったんやろ…

数分前の自分に「言うたらあかん!」と釘を刺してやりたい…

私は、キラキラと目を輝かせている息子を見ながら、深く溜息をついた。

まさか、こんな面倒くさいことになるなんて…

「もみじって食べれるんやで!」

それは、きれいに秋色に染まった街路樹の中継を見ながら、深く考えずに放った一言だった。

「えっ?そうなん!?食べれるん!?」

そう言う息子に私は「そうやで!もみじは天ぷらにして食べたりするんやで!」と答える。

大阪出身の私は、息子にもみじ天ぷらについて教えた。

もみじ天ぷらとは、大阪の箕面市に伝わる銘菓。

きつね色の食用もみじに、衣を付けて揚げたものだ。

ほんのりとした甘みがあり、あの美味しさは今でも記憶に残っている。

息子に説明をしていると…

—ん?

私は気付いてしまった。

息子の表情が、期待に満ちた表情にみるみる変わっていっていることに。

—なんか…嫌な予感…

そして、期待のまなざしを私に向けて、こう言い放った!

「たべたい!!つくってーー!!」

(ガーーーン。)

聞きたくない言葉を聞いてしまった。

もみじ天ぷらを作れだとーーー!?

その頃の息子は4歳。

まだまだイヤイヤ期真っ盛り。

やりたいと思ったことは絶対に譲らない時期であった。

諦めさせるなんてとてもとても…

残念ながら私には、もみじ天ぷらを作る選択肢しか残されていなかったのだ。

「あーーどうしよー。」

翌日、どんよりとしたオーラを漂わせながら、私は近所のスーパーへ重い足を運んだ。

食用もみじなんて、そこらへんに売っているわけがない。

それでも、藁にもすがる思いで、スーパーの食品棚とにらめっこ大会を始める。

思い当たるところを探すも、やはり見つからない。

—もみじなんか売ってないよな…

わずかな希望も消えそうになっていた。

そして、息子になんて言おうかと、言い訳を考え始める始末。

諦めて、出口へ向かおうとしたその時…

「!!!!!」

ふと、あるものが目に入ったのだ!

—これやーーー!!

夕食が並ぶ食卓。

私は息子に、自信満々にこう告げた。

「もみじって、緑色もあるんやで!」

息子の目の前にあるのは…

なんと、緑色の天ぷらだった。

「ほんまや!!みどりや!」

満面の笑みで、息子は天ぷらを頬張る。

「おいしーーー!!」

そんな息子の姿を、私は満足げに見つめながら、心の中で息子に種明かしをした。

—息子よ。
君が食べているのは、「もみじの形」にした「大葉」や!

そう。

私が見つけたのは、青々と凛々しく佇んでいた大葉たち。

もみじ型にカットした大葉の天ぷらたちは、息子の心もお腹も、無事満たしてくれた。

同時に、私の心も、達成感でいっぱいだった。

ありがとう!私を助けてくれた救世主!

でも君達のことは、息子にはまだ内緒(笑)

2人の子をもつ元看護師。カフェで読書をするのが大好き。あたたかく、やすらぎのある暮らしを目指し中。感性を磨き、自分の経験を元に、心に寄り添える発信をしていきたいです。チャキチャキな大阪弁でのお笑い要素も満載♪ 実績:第4回IWriteグランプリ優勝

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