「えっ!?ないんですか!?」
申し訳なさそうな顔をする店員さんを見ると、こちらも申し訳ない気持ちになる。
でもそれ以上に、私はお花が一気にしぼんでしまったかのような気持ちになってしまった。
会いたくて、たまらなかったのに…
11月下旬のカフェは、もうすでにクリスマスムードに染まっていた。
クリスマスの飾りやBGMが、私をより一層ワクワクさせる。
そんな私は、テーブルに立てかけられているメニューを開いた。
そこには…
ふんわり感が伝わってくる生地。
雲のようにほわほわとした生クリーム。
その上には、水々しく輝くオフホワイトの洋梨。
メニューには、まさに極上の洋梨パンケーキが載っていたのだ。
(フフフフ♡めっちゃ美味しそう♡)
私は今日、このパンケーキを食べるのを、ずっと楽しみにしていた。
11月から期間限定の洋梨パンケーキ。
11月になったら、絶対すぐ食べに行く!
そう心に決めていた。
でも、そう簡単には行かなかったのだ。
エッセイ大会の原稿の執筆。
娘の幼稚園の行事の準備。
とどめに、息子のインフルエンザ。
いくつもの試練があり、なかなかカフェへ足を運べなかった。
それらを乗り越え、今やっとパンケーキとご対面できるところだ。
「洋梨のパンケーキお願いします♡」
注文を取りに来てくれた店員さんに、迷いなく伝える。
(わぁ♡やっと食べれる♡)
私はなんの疑いもなく、そう思っていた。
ところが…
なんだか、店員さんの様子がおかしかった。
そして、店員さんからの一言で、状況は一変してしまったのだ。
「お客様申し訳ありません!今日は洋梨パンケーキをご提供できないんです。」
(ほえ?)
私の脳内は一瞬シャットダウン。
なんとか立ち上げ直すも、なかなか整理ができない。
(提供できない?えっと、それはつまり…)
徐々に状況を飲み込めてきた。
もしかして…食べられへん!?
一気に不安が襲ってきた。
やっと、やっと食べられると思っていたのに…
そして、私は店員さんに問いかけた。
「えっ!?ないんですか!?」
私の一言で、更に店員さんの表情が曇る。
あーこれはもう、諦めるしかないのかも…
そう思っていた時だった。
店員さんが告げた言葉で、状況はまた変わった。
「申し訳ございません!本日ご用意していた洋梨がまだ熟れていなくて。十分な甘さの物をご提供できない状態でして」
え?甘くない?
だから食べられない?
私の胸に、何かが突っかかる。
「ご提供ができない」
そう店員さんは言った。
でも、
「作れない」とは言っていない。
そう思った私は、店員さんに問いかけた。
「それは作るのも難しいってことですか?」
すると店員さんは、まっすぐこちらを向いてこう答えた。
「いえ、作れることは作れます」
えっ!?作れるん?
一気に風向きが変わった。
「作れるんですか!?」
店員さんに必死にそう尋ねると…
「はい。でも甘味が強くないので、満足いただけるかどうかは…」
店員さんはそう言うが、私は負けじと続ける。
「でも作ってもらえるんですよね!?」
店員さんの答えは…
「はい。作れます」
甘くない洋梨。
それで満足できる?
いや、でももうパンケーキの口になってしまってる。
期間限定のパンケーキ。
もし、今日を逃したら…
そして私は、店員さんにこう告げた!
「洋梨のパンケーキでお願いします!!」
そして、15分ほど経過。
ふんわりとした生地。
雲のようにほわほわとした生クリーム。
水々しく輝くオフホワイトの洋梨。
私の目の前には、メニュー表で見た通りのパンケーキが佇んでいた。
やっと…やっと出会えたパンケーキ。
ナイフを入れた瞬間、生地の弾力がダイレクトに伝わってくる。
私はパンケーキを、ゆっくり口に運ぶ。
生クリームの甘さと生地の相性が抜群で、一瞬でほっぺたが落ちてしまいそう。
さらに、洋梨の爽やかな甘味が、口いっぱいに広がる。
(洋梨甘くないって言うてたのに…十分甘いやん♡)
心配していたことが、一気に吹っ飛んだ。
私はまたたく間に、天国にいるような気分になった。
こうして私は時間をかけて、パンケーキの美味しさを噛み締めた。
たかがパンケーキ。
ちょっと必死すぎたかな?と少し自分で呆れてしまった。
でもあの時、「じゃぁいいです」と言わなくて本当によかった。
諦めずに食い下がったおかげで、私は一番楽しみにしていたパンケーキに出会えたのだから。