聴かなくなったCD

人間関係

ウソでしょ…
まさか、そんな人だったなんて…

予想もしていなかったニュースに、
私の心が、粉々に砕け散った。

大好きだったのに…
 
 
それは、
長い時間をかけて積み重ねてきた「好き」だった。

私には、25年近く応援してきた二人組の男性アーティストがいる。

出会いはラジオだった。
二人の掛け合いが妙におもしろくて、思わず耳を傾けた。
たぶん、こんな感じ。

「お前、それラジオで言う?」
「え、言ったらあかんかった?」

そんな、嫌味のない軽妙なやりとりに、

なんか、この二人おもしろい!
新人の漫才師かな?
知らないなぁ…

そう思った直後、

「〇〇〇〇の新曲です。聞いてください!」

とDJが言って、曲が流れた。

…えっ、この人たち、歌手だったんだ

やさしいメロディ。
美しいハーモニー。

私は、すっかり心を奪われた。
曲が終わると、DJが続けて言った。

「〇月〇日に〇〇でコンサートがあります」

行きたい!!
彼らの生の声を聴いてみたい!!

初めて聞いたこの二人の声に、私はすっかり虜になっていたのだ。

私はすぐに、チケットぴあへ向かった。

やった!!取れた!!

もう、気持ちは当日だった。

そして迎えた当日。
緊張して待っていると、ステージにその二人が登場した。

キャー========!!!!

心の中で、思いっきり叫んだ。

ひとりで来ていたから、さすがに声に出せなかったけど、心の中は大絶叫だ!

そして、さっそく始まる演奏。

ラジオで聞いた、ハーモニー、ギター。

ラジオでは見ることができなかった、実際に使っているギター。

そして、私の心をつかんだ軽快なトーク。

やっぱり、この人たちってすごい!!
ラジオでもすごいと思ったけど、生は最高だ!!
来てよかった!!!

私はそのままファンクラブに入会し、その後、何度もライブに行き続けた。

公式ホームページで、日程を確認し、
行けそうだと思ったら、ホテルを押さえて飛んでいく!

グッズも買って、完全に追っかけになっていた。

気が付いたら、15年。

それでも、私の二人への愛は変わらず、大好きだった。


大好きだった気持ちのまま過ごしていたある日。
ファンクラブから一通のメールが届いた。

何だろう…

そう思って開くと、

「公式ホームページで、重大なお知らせがあります」との文字。

重大なお知らせ?
何…?

気になった私は、すぐに公式ホームページを開いた。
そこに書かれていたのは、衝撃の事実だった。。

「ラブソングを歌う男にまさかのスキャンダル」

翌日のスポーツ紙に掲載されるという。

デビュー前から妻子がいたこと。
それを隠していたこと。
そして、過去の不倫。
ファンへのお詫び。

……何、これ。
どういうこと…?

私は、読み進めるのが苦痛になった。

何でずっとファンに隠してたの?
別に言ったっていいじゃない。

あんなにやさしい曲を書いてきた人が…
あんなに真摯に見えていた人が…
大好きだったのに…

信じて応援してきた自分の気持ちは、根底からくつがえされた。
その日から私は、彼らの曲を日常から遠ざけた。

数日後、ファン仲間から一通のメールが届いた。

そこには、
今回のスキャンダルに驚き、
ショックを受けていることが綴られていた。

──私と、同じ気持ちだ。

私は、
しばらく距離を置くつもりだと、短く返信した。


今までなら、彼らのライブを追いかけることで忙しかった私。

次、いつライブかな…?

公演日が出ればホテルを予約して、スケジュール帳は予定で埋まっていった。

忙しいのに、心は満たされていた。

でも、今はもう違う。

開いた手帳には、空白ばかりが続いている。

……何を入れよう

あれだけ聴いていた彼らの曲も、最近は再生していない。

代わりに知らなかったグループの曲が、プレイリストに並び始めた。

私、こんなの聴くんだ……

自分でも少し驚く。

今まで通り朝は来るし、仕事にも行く。

スーパーで野菜を買い、洗濯物を干す。

日常は変わらず進んでいて、私も意外と普通にその中にいる。

棚の奥のCDとグッズに触れ、カチャリと小さな音がした。

こうやって、変わっていくのだろうか。

私はそっと戻し、白い手帳を閉じるのだった。

事務職として働きながら、エッセイを学ぶ。 日常を振り返った時に気づく、 小さな違和感や感情の揺れをすくい取り、 言葉にすることを大切にしている。

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