幼稚園バスの向こう側

出産・育児

一体、何が不満だっていうの?

毎朝、泣いて保育園に行くのを嫌がる娘。

園では楽しくしてるって、言うけど…。

毎朝、布団から起き上がると同時に、

娘の頬をポロポロと涙が伝う…

しっく…、しっく…、

「ほいくえん、やだ…」

まだ薄暗い部屋の中…

娘は、心細げに小さく呟いた。

泣いてる理由を教えてよー…

ママだってもう泣きたいよ…

娘は年少クラスになってから、

保育園に行くのを拒むことが増えた。

もともと「人見知り」が強いタイプの娘。

公園で同じ年頃のお友達に、

「あ〜そぼっ!」なんて言われたもんなら…

サッと、私の後ろに隠れてしまう…

それはまるで、忍者のごとく素早い動きで。

そんな娘の為に…

保育園選びにはかなり力を入れた。

人見知りだけど、外遊びが大好きな娘。

少人数制で…アットホームで…

自然との触れ合いが多くて…

そんな理想的な園を探し求めて、市外の園にも見学に行った。

だから…

ここはやっと見つけた「理想の保育園」

……のはずだった。。

人見知りの娘には、まさにピッタリな園だろう…そう思って疑わなかったのに。

娘は今、こんなにも毎朝泣きじゃくり、

行きたくないと訴えている。

一体、なぜ…?

保育園の先生に相談すると…

決まってこの言葉が返ってくる。

「園ではとっても楽しそうにしていますよ♪」

いやいやいや、、

そんなの信じられないって、先生!

思わず、口からこの言葉が出てしまいそうになる。

どうして行きたくないのか、娘に聞けば…

「…だって、ママいないんだもんっ!」

と、ムスッと膨れっ面になってしまう。

えーー!でもさぁ…

保育園では楽しくしてるんだよねー!?

理由はどんどん分からなくなる…

そしてまた朝を迎えると、娘は泣き出す…

もう!何が不満だっていうの?

毎日泣き続ける娘に対して、私は限界が近づいていた。

そんなある日…

私達は、近所の公園へ向かって歩いていた。

すると…

道路の向こう側から、

「せんせい、おはようございます!」

女の子の元気な声が聞こえて来た。

その声のする方へ目を向けると…

そこにいたのは近所のKちゃんだった。

それも…

とっても可愛いらしい制服を身に纏って。

先生に挨拶を済ませたKちゃんは、そのまま幼稚園バスに乗り込んでいく。

じーーっと、その様子を見つめる娘…。

娘はKちゃんが乗った幼稚園バスの姿が、見えなくなるまで見ていた。

そして、次の瞬間…

耳を疑う発言をしたのだ。

「わたしも、あの幼稚園バスのりたい!」

……え?

幼稚園バスのりたい?

「バスに乗って、幼稚園に行きたいの?」

私が娘に尋ねると…

娘の表情はみるみるパァッと明るくなり…

「うんっ!アンパンマンの幼稚園いくの!」

(知ってたのか、このバスがアンパンマンの幼稚園って…)

その幼稚園とは…

願書提出日には、

大行列ができると巷では有名な幼稚園だ。

人気の理由は、なんといっても…

お城をイメージした園舎と、

一際目立つアンパンマンの遊具たち…

こりゃあ、誰だって憧れるよね。

だって、パッと見テーマパークだもん。

でも…

人見知りの娘が、こんな大きな幼稚園に馴染めるとは思えない…

思えない…けど

この状況が、少しでもいい方向に変わるなら…

よし、見学してみよう!

こうして、私たちは幼稚園を見学することとなった。

そして迎えた当日。

私たちは、お城の門をくぐり…

わぁ〜〜!

と目をルンルンさせながら、辺りを見渡す。

すると…

「こんにちわー!お待ちしてましたよー♡」

前方から、明るい笑顔の先生が声を掛けてくれた。

「◯◯ちゃん!ママがお話してる間、先生と幼稚園の探検してみない?♡」

先生からのお誘いに、娘は迷うことなく、サッと私の手を離れた。

(おー、行った…)

内心、私はかなり驚いた。

じぃじにでさえ、慣れるまでに3年もかかった、あの娘が!!

たった今、会ったばかりの人について行くなんて…!

私は先生と談笑しながら、娘が戻るのを待っていた。

しばらくして…

「お待たせしました〜!」

先生と明るい表情の娘が、戻ってきた!

「楽しかったぁ!」

目を輝かせながら話す娘。

こんなにイキイキとする娘を見たのは、初めてかもしれない…

その笑顔をみて、私は思った。

あぁ、もしかして私勘違いしていたのかも。

娘のこと分かってるつもりで、分かってなかったんだ…

娘の「輝ける場所」はここなのかも…。

この時点で、

心はもう決まっていた。

___私たち親子は「転園」を決意した。

「せんせい、おはようございます!」

娘の元気な声が響き渡る。

そして、可愛い制服を着て

幼稚園バスに乗る姿が毎朝の光景になった。

「今日は◯◯ちゃんと遊んだの!」

毎日とても楽しそうに、その日の出来事を私に教えてくれる。

「うんうん、よかったね〜!」

と、私も笑顔で呟く。

あれだけ毎朝、泣き続けた娘が、

今ではウソのようだ…

変わるべきだったのは、私の方だったのかも…

当時の私に伝えてあげたい…

幼稚園バスの向こう側には、

娘のまだ見ぬ笑顔が広がっているよ!って。

30代 女の子の母。 読者と移動が好き。 自分の""心地いい""を大切に。 ひとりの人間として、母としての視点から、 エッセイを書いています。

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