ライブ参戦への道(第一章)

2026.07.07
つれづれ

「えー、かーわーいーいー!」

先に開封した娘が甲高い声をあげる。

二カ月前、

「今しかない!」

と興奮して、娘と二人分ポチッたペンライトが届いたのだ。

けっこういいお値段ではあった。

でもそれ以上の価値がある!

なぜって、七か月後にある推しアイドルくんたちのライブ参戦への必需品だからだ。
 
 
 
グリップ部分は白で、マイク部分は透明だ。

よく覗いてみると、マイク部分の中央にはクリスタルの王冠が入っている。

まさに王子様たちを応援するのにふさわしい代物。

おそるおそるスイッチを長押ししてみる。

1、2,3秒。

ピカーン!

中央の王冠がピンク色に輝いた!

「おおぉ!」

娘と目を見合わせる。

押すたびにピンク、青、赤、白、黄と色が変化していく。

「やばいね!」

「うれしいね!」

二人ともニヤニヤが止まらない。
 
 
 
しかし一つ問題がある。

ペンライトって実際会場でどうやって使うのだろうか。

振るの?ずっと持ってるの?ずっとつけとくの?

わからない。

謎である。

50歳過ぎて初めてアイドルのライブ参戦するだけでも緊張するのに、わからないことが多すぎる。

よし。

ここはアイドルファン歴数十年のあの子、Aさんに聞いてみよう。
 
 
 
翌日私は職場のAさんに話を伺った。
 
「ペンライトが昨日届いたんです!でも実際のライブ会場でのお作法がわからなくて。
あれってずっと持ちっぱなしなの?」
 
私より一回り以上年下であろうAさんは、真剣にお作法について教えてくれた。
 
「そうなんです。基本的には片手にペンライト、片手にうちわを持って胸の前あたりで
こんな感じで持ってます。」
 
両手を胸の前あたりに持ってきて再現してくれるAさん。
 
「なるほど。じゃあ盛り上がる曲の時は持ったままイェーイとか手を振り上げるの?」
 
するとAさんは少し渋い顔して首を横に振る。
 
「それはあまり良しとされてないんです。後ろの人たちが見えなくなっちゃうから。」
 
「えー!普通のアーティストのライブだと拳ふりあげたりするけど、それダメなんだ!」
 
私が驚愕していると、Aさんは控えめに左右の手を上下しながら、
 
「せいぜい自分の頭までの範囲内でこう、かわいく上にあげる感じですかね。」
 
とまたもや再現してくれた。
 
かわいい。
 
そうか、ペンライトやうちわで後ろの人の邪魔をしちゃうのか。
 
聞いてみないとわからないもんだな。
 
 
 
あと、この話もしたい。
 
「客席にメンバーが近づいてきた時、ライトの色をメンバーカラーに変えるよね?
私慣れてないからまごまごしちゃうかも~。」
 
するとAさんはこう言った。
 
「あ、それマナー違反なんです。」
 
「え、なんで?」
 
近くに来てくれたアイドルを応援するのがマナー違反?
 
どういうこと?
 
「もしね、Fさんが白推しだったとしましょう。そして隣のお姉さんが赤推しだった場合。
さっきまで白だったFさんが赤にしたことで、赤のファンサがFさんに行ってしまう可能性があるんです。」
 
「そうか!つまり赤推しのお姉さんがもらっていたかもしれないファンサを、私が奪ってしまう可能性があるということね?」
 
「そうなんです!だから基本的に色チェンジはあまり良しとされていません。」
 
ほぉー…
 
頭がくらくらしてきた。
 
私、ついていけるだろうか…
 
 
 
不安を抱えたまま家に帰ってきた。
 
リビングには推しのライブDVD。

そうだ、週末に娘と一緒に予行練習をしよう。

そう、実際にペンライトを使用するのだ!
 
 
 
そして日曜日。

TVの前に二人並んできちんと座る。

「I LOVE 〇〇」と書かれた推しTシャツを着て。

もちろんペンライトも持っている。

ここまでは完璧だ。

「じゃあ再生するよ。」

私は白、娘は黄のライトをつける。
 
 
えいっ。
 
 
再生ボタンを押すと「キャー」という歓声とともに推しがTVに映し出された。
 
 
やーん!

始まったー!
 
 
「Jくんかっこよすぎる~!」
 
「Yくんかわいい~!」
 
 
気づけば自然とペンライトを振っている私たち。

あっっ!

いかんいかん。

練習するんだった。
 
 
「こんな感じ?上げすぎ?」

客席を見ながら娘と高さを確認する。
 
 
そうこうしているのも束の間。
 
 
~~~♫
 
あー!
 
!!!
 
この曲は!!
 
 
一番のお気に入りが始まり、私たちはテンションマックスに。
 
 
「キター!」
 
 
いよいよ娘は踊りだす。

私はJくんの美貌にうっとり。

本当にかっこいい!!
 
 
…幸せだ(泣)!!!
 
 
「ありがとうございましたー!」
 
 
あっという間の二時間。
 
 
「終わっちゃったねー。」

「めっちゃよかった。」

「神セトリ!」
 

興奮冷めやらぬ私たち。
 
 
…あれ?
 
 
「ペンライト、使ったっけ?」
 
 
最初こそ意識していたが…
 
 
「持って振ってただけだったね(笑)」
 
 
推しを目の前にすると、結局気にならないってことか!
 
 
周りの方のご迷惑にならないようにだけ、注意。

あとは楽しんでいこう!
 
 
「あー楽しかったねー!」

不安も解消され、あとはライブを待つのみ!

そう思っていると、娘がさらっとこう言った。
 
 
「次はコールの練習だね!」
 
 
えっ?????
 
 
__ライブまであと半年。

私たちの道はまだ続いていく__。

50代。事務職。夫・娘・息子の四人暮らし。日常のささいな気づきやクスッと笑えるような出来事で幸せを感じていただければ。趣味、スピ活、推し活、食べることなど。

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