アニバーサリーは学ランとともに

家族

あれ、
 
 
え?
 
 
箱の中身を確認する手が止まる。
 
 
んなわけない。
 
 
 
「ねぇ、もう一つ箱届いてない?」
 
 
息子に聞くが、
 
 
「ないよー」
 
 
とそっけない。
 
 
 
お前の制服やろが。
 
 
と思うが、仕方ない。
 
 
 
長袖シャツ、

半袖シャツ、

冬用スラックス、

夏用スラックス、

校章も入っている。
 
 
 
 
……で、学ランは?
 
 
 
 
いやいや、

何かの間違いに違いない。
 
 
 
あらためて納品書を広げてみる。
 
 
もう一回、ちゃんとチェックしよう。
 
 
 
長袖シャツ、ある。

半袖シャツ、ある。

冬用スラックス、ある。

夏用スラックス、ある。

校章、ある。
 
 
 
学ラン、
 
 
 
 
 
…ない!!
 
 
 
 
いやいや、そんなはずないでしょ。
 
 
 
みんなで渋谷の百貨店に制服採寸しにいったよね?
 
 
 
私と娘はロフトをうろつき、

その間に夫と息子で採寸してもらって、

175センチのサイズだったって言ってたよね!?
 
 
 
私は混乱した。
 
 
 
え、待って。

なんで入ってないの?
 
 
もう一度よく納品書を見てみる。
 
 
しかしそこに

『詰襟』

の文字はない。
 
 
 
えーと…

あとから別で発送されてくるってこと?
 
 
 
 
胸がドキドキしてきたので、

落ち着くために深呼吸。
 
 
 
これってたしか私がネット注文したやつよね?

何度も確認したやつよね?
 
 
 
…そうだ、まずはスマホの注文履歴!
 
 
 
メール受信箱を確認する。

入学関連のものにはフラグを立てていたはずだ。
 
 
 
あった!
 
 
『ご注文控え』メールを開く。
 
 
 
長袖シャツ。

半袖シャツ。

冬用スラックス。

夏用スラックス。

校章。
 
 
以上。

 
 
……いやいや。

そんなわけないでしょう!
 
 
 
脳内パニックである。
 
 
 
…いや、まて。

よく考えて。
 
 
学ランだけ注文し忘れるなんてことある?
 
 
システム不具合でうまく反映されてないだけじゃない?
 
 
たしか発注した時のスクショもとってあるはず。
 
 
さすが私。
 
 
スマホのアルバムを確認だわ。
 
 
あれは2月末だったはず。
 
 
 
 
…見つけた!
 
 
 
 
長袖シャツ、

半袖シャツ、
 
 
 
…以下、同文。
 
 
 
 
 
…ここで私はようやく諦めた。
 
 
 
注文し忘れている。
 
 
 
 
 
やってもうた。

どうしよう。
 
 
 
「あのさ…学ラン注文し忘れたかも…」
 
 
え?
 
 
と夫と息子が振り向いた。
 
 
「あとから届くんじゃないの?」
 
 
と言う夫に、
 
 
「…そう思って確認したんだけどさ、どうも注文自体してないみたいで…」
 
 
と答える。
 
 
固まる二人。
 
 
「百貨店に連絡して、本当に注文されてないか確認してみる!」
 
 
この期に及んで人のせいにしようとする私。
 
 
 
もちろん、注文していないのは私のほうだった。
 
 
 
「入学式が4月6日ですよね?

 急ぎますが、ギリギリ間に合うかどうか…」
 
 
Oh No!
 
 
しかし、仕方ない。
 
 
「わかりました。こちらのせいなので大丈夫です。」
 
 
「納品日程がわかり次第ご連絡しますね。」
 
 
 
 
よろしくお願いします、と

電話口で深々と頭を下げた。
 
 
 
 
あー…

やっちまった。
 
 
 
 
「ねぇ、本当にごめんね。」
 
 
息子に謝る。
 
 
「…うん。」
 
 
トーンが低い。
 
 
そりゃそうだろう。
 
 
入学式に自分だけ学ランなしなんてありえない。
 
 
 
ここは、どうにかして入学式までに学ランをGETしなければ!
 
 
同じ学校の先輩から借りられないだろうか…
 
 
いや、知り合いは女子しかいない。
 
 
じゃあ、どうやって…
 
 
 
翌日、出勤すると私はすぐに同僚たちに相談した。
 
 
「いたいた、知り合いにそういう人!」
 
 
なにー!?

ぜひその話、聞かせて!
 
 
「PTAが多分持ってるよ。

 ほら、卒業生から制服集めてバザーやるでしょ?

 その在庫があるはず!」
 
 
なんと、PTA!

今まで存在の意味がわからないなんて言ってきて、本当にごめんなさい!

あなたたちは、まじで必要です!
 
 
「ありがとう!明日学校に電話してみるわ!」
 
 
さすが、子育て百戦錬磨の頼もしい精鋭たち。
 
 
「大丈夫だよ、

もしなくても、誰かの学ラン借りてボタン替えればわかんないって。」
 
 
援護射撃もぬかりない。
 
 
 
翌朝、一番で私は学校に連絡した。
 
 
「実は詰襟を発注し忘れてしまい…

 入学式に間に合わなければ、

PTAさんで保管しているものをお借りできないでしょうか?」
 
 
入学前から、恥ずかしい。
 
 
でもそんなこと言ってる場合じゃない。
 
 
 
要点を理解した事務の方は、すぐに確認してくれた。
 
 
「はい、大丈夫です。

ちょっとくたびれていますが、いいですか?」
 
 
え?!
 
 
助かった!!
 
 
「全く問題ありません!」
 
 
やった!
 
 
学ランGETだぜ!
 
 
 
 
こうして、学ランなしの入学式は無事回避。
 
 
よかったーと同僚たちに報告した日、百貨店からも留守電が入っていた。
 
 
 
「詰襟が届きました。明日以降お越しください。」
 
 
ま、間に合ったー…(泣)
 
 
実に、入学式三日前のことである。
 
 
 
 
 
 
翌日、学ランを取りに行った私と息子。
 
 
帰り道、息子の手には無事に学ランが。
 
 
そして、私の手には誕生日ケーキがぶらさげられていた。
 
 
奇しくも今日は私の誕生日。
 
 
私は息子に、こう告げた。
 
 
「これこれ~!この学ランが今、お母さんが一番欲しかったプレゼント!」
 
 
そんな私を見て、息子は横で苦笑いしていた。
 
 
思いがけないハプニングだったけど、
 
 
アニバーサリーにふさわしい、最高の演出ということにしておこう。

50代。事務職。夫・娘・息子の四人暮らし。日常のささいな気づきやクスッと笑えるような出来事で幸せを感じていただければ。趣味、スピ活、推し活、食べることなど。

関連記事