サンタは家(うち)にやってこない

家族

 
 
 
“サンタクロース イズ カミング トゥ ターウン!”
 
 
 
本当だったら、聴くだけでワクワクするはずのクリスマスソング。
 
 
 
 
でも、私は違っていた。
 
 
 
 
今にも胸が張り裂けそうだった。
 
 
 
 
——サンタさん!来てよ!
 
 
 
 
 
 
 
 
もう目の前まで、冬休みが迫っていたある日のこと。
 
 
小学5年生の私は、クラスメイトのAちゃんと教室でお喋りをしていた。
 
 
話題は“クリスマスプレゼント”。
 
 
 
(プレゼント、何お願いした?)
 
 
そんな感じで盛り上がるだろうと思っていた。
 
 
 
ところが、話題はいつの間にか、プレゼントからサンタさんになっていた。
 
 
そのタイミングで、私はなんのためらいもなく、Aちゃんにあることを打ち明けた。
 
 
 
 
「えっ!?ヒトミ、サンタさんからプレゼントもらったことないん!?」
 
 
 
そう。それは、サンタさんから一度もプレゼントをもらったことがないこと。
 
 
 
すると、口元をニヤッとさせたAちゃんが、私にこう言ってきた。
 
 
 
「いい子じゃないから、サンタさん来ないんちゃう?」
 
 
 
 
えっ…
 
 
 
 
あまりの衝撃で、私は開いた口がふさがらなかった。
 
 
 
私はしょぼくれた顔を隠すように、上靴の先っぽに目を向ける。
 
 
Aちゃんは、面白そうに笑っている。
 
 
あげくの果てに、近くにいた先生までが、つられて笑っていた。
 
 
 
 
悔しかった。
 
 
 
唇をギュッと噛み締める。
 
 
本当はAちゃんに反論したかった。
 
 
 
だけど、できなかった。
 
 
 
だって、本当のことだったから。
 
 
 
私のクリスマスプレゼントはいつも…
 
 
 
 
 
 
 
 
クリスマス当日。
 
 
「はい!ヒトミちゃん!クリスマスプレゼント!」
 
 
「ありがとう…おばあちゃん」
 
 
 
そう。我が家のサンタさんは、昔からおばあちゃんだったからだ。
 
 
 
 
 
でも本当は…
 
 
 
 
サンタさんからプレゼントを貰いたかった。
 
 
 
「サンタさんからプレゼントもらったー!!」
 
 
 
そう言っている友達が羨ましかった。
 
 
 
けれど、子供ながらにおばあちゃんの優しさも分かっていた。
 
 
 
 
だから、口が裂けても言えなかった。
 

 
 
「サンタさんから貰いたい」なんて…
 
 
 
ギュッと噛み締めた私の唇は、少し震えていた。
 
 
 
しかし、クリスマスから数日後のある日のことだった。
 
 
 
 
 
 
「ヒトミちゃん!こんにちは!」
 
 
伯母が我が家に遊びに来てくれた。
 
 
暖かいコタツに一緒に入りながら、他愛もない話をしていた。
 
 
 
ところが、まさかのあの話題が出てきたのだ。
 
 
 
「ヒトミちゃん!おばあちゃんからクリスマスプレゼント、何をもらったの?」
 
 
 
 
(あー。あまり聞かないで欲しい)
 
 
伯母の何気ない問いかけは、私の心をジリジリと追い詰めてくる。
 
 
 
 
誰にも言えない気持ち。
 
 
 
 
心はまるで、氷のように冷たい。
 
 
 
 
「おばあちゃん、ヒトミちゃんにプレゼントあげるの、楽しみにしてたよ!」
 
 
 
 
(そんなこと分かってる…だから苦しいんやんか…)
 
 
 
 
伯母の言葉に、素直になれない自分が嫌になる。
 
 
 
だが、次に伯母が口にした言葉に、ハッとした。
 
 
 
 
「何がいいかな?って、伯母ちゃんにまで電話してきてたんよ!」
 
 
 
 
 
えっ…。
 
 
 
 
伯母の言葉を聞いたその瞬間。
 
 
 
 
私の頭の中に、クリスマス前のおばあちゃんの姿が、鮮やかによみがえってきた。
 
 
 
 
 
おもちゃ屋さんのカタログを、眼鏡をかけて何度もめくっていた姿。
 
 
「いま好きなキャラクター何や?」と聞きながら、真剣にメモをとっていた手元。
 
 
 
 
 
——ああ、そうやった。
 
 
 
 
あのプレゼントは、おばあちゃんが何日も何日も悩み抜いて選んでくれたものやったんや。
 
 
 
 
それなのに、私はずっと、「サンタさんじゃない」ということばかり気にしていた。
 
 
 
 
おばあちゃんのまっすぐな愛を、ちゃんと見ようとしなかった。
 
 
 
 
 
(なんで気づかへんかったんやろ…)
 
 
 
 
 
冷たく凍りついていた心が、ランタンの火に灯したように、ポッと温かくなっていくのを感じた。
 
 
 
 
 
 
 
それ以来、家にサンタさんが来ないことに、後ろめたさを感じなくなった。
 
 
 
 
むしろ、
 
 
 
 
私のそばには、いつもサンタさんがいる。
 
 
そう誇らしく感じるようになっていた。
 
 
 
 
Aちゃんに、来年もサンタさんが来ないことをバカにされたら、次はこう言ってやる!
 
 
 
 
「サンタは家にやってこない。だって、いつも一緒にいるんやもん♡」

2人の子をもつ元看護師。カフェで読書をするのが大好き。あたたかく、やすらぎのある暮らしを目指し中。感性を磨き、自分の経験を元に、心に寄り添える発信をしていきたいです。チャキチャキな大阪弁でのお笑い要素も満載♪ 実績:第4回IWriteグランプリ優勝

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